道を切り拓きながら農業と格闘する

道を切り拓きながら農業と格闘する

取材はそれぞれのファームの畑で待ち合わせて行われた。
同行者の方が「諫早湾干拓農地の若い柱です」と評したように、弱冠23歳の若さで農業に従事している嵩下さんが待ち合わせ場所にやってきた。

 

彼の前職は福岡のショップのスタッフだった。
持ち前の明るい性格で服と人をつなぐ役割を果たす。

 

だが、お店の閉店を機に意を決して農業の道へと進んだ。
実家は父親が営む土木会社。
嵩下さんにとって、この広大な干拓地が初めて農業に接した場所となる。
心のどこかに「農業はやれるだろう」という意識を持っていた。
だが、それは脆くも崩れ去る。

 

「完全に農業をなめてましたね。最初の頃は本当にきつかったですね。去年の夏場に一度倒れてしまって。吹きさらしの上、暑さにやられてしまいましたね」

 

自分と同世代の若者が農業に従事するケースが増えている現状に対して、彼は歯痒い思いも抱いている。

 

「農業をしたいと思ってこっちへ来て仕事に就いても、長く続く人がどれだけいるのか。農業をなめてかかると痛い目をみるぞ、って言いたいですね。自分が身を持って体験していますから。振り返ってみても、最初の一年はついていくのがやっとでしたね。でも、頑張ってやってきて上にいる人から”成長したな”と言われたのが本当に嬉しかったです」

 

夢中で駆け抜けた一年を経て、自身の成長を実感している。
今は体力面でも余裕が生まれ、かつて在籍していた社会人野球チームに復帰した。
数少ない休日は諫早からチームの拠点がある福岡まで遠征してプレーしている。
農業に打ち込みながら、自分の好きなことも我慢しない。
そんな嵩下さんを見ていて、自分の道を切り拓くとはこういうことなのかと実感した。